理事長挨拶

豊田 正和

豊田 正和

 2020年の世界は、100年に一度の大きな変動に直面しています。

 何といっても、Covid-19 の世界的蔓延です。その影響で、6月にIMFは、世界経済は大恐慌以来最悪となるマイナス4.9%の落ち込みを見せるとの見通しを発表しました。結果として、石油、ガス、電力など、全てのエネルギー需要は大幅な低下を見せ、価格も低減しています。
 こうした中、国際面では、①大統領選を迎える中で社会の分断が深まる米国、②Brexitなどに代表されるEUの求心力の低下、③上記がもたらす欧米中心型の世界運営の揺らぎ、④米中の経済冷戦の深化と政治的緊張関係の高まり、⑤中東における様々な対立、⑥Paris合意を踏まえた気候変動対応の本格化、などの変化が注目されます。
 国内面では、秋から次期エネルギー基本計画の議論が始まります。同計画では、2040年のエネルギー・ミックスの在り方が議論の焦点になるでしょう。主要課題としては、原子力発電所の再稼働のスピードアップ、急速に普及する再生エネルギーのコストダウン、加えて水素に代表される革新的なゼロカーボン・エネルギーの開発利用促進などが注目されます。  

 エネルギーは経済活動の重要な基盤の一つですが、日本はエネルギー自給率が2018年度で11%という、極端なエネルギー資源小国です。エネルギーの安定供給の確保と合理的な価格での供給は、日本経済発展の基本的な前提です。同時に、温暖化防止のための適切な対策が求められています。これらの3つのE(エネルギー安全保障、経済効率性、及び環境保全)」に、福島の原発事故からの教訓としての「S(安全性)」を加えた「3E+S」は、日本だけではなく、成長するアジアの国々を含め世界共通の課題であり、相互依存性を深めた国際社会では、日本やアジアの動向が世界に大きな影響を及ぼしています。

 当研究所は時代の要請を見据え、エネルギー政策や環境政策について、事実を直視した客観的分析と将来予測を踏まえた適切な政策提言などにより、国内外に確固とした地位を築いて参りました。今後も内外の政府・産業界・有識者・調査機関等との緊密なネットワークを活用し、エネルギー問題と気候変動問題をコインの表裏ととらえて、経済成長に貢献するための最適解を見出すことを着実に目指して参る所存です。当研究所の調査分析と政策提言が、政策形成や企業戦略構築に、タイムリーに貢献できるよう取り組んで参ります。とりわけ、7月にはその時々の重要課題の分析報告、10月には、中長期を見据えてアジアや世界への政策的メッセージ提供に焦点を置いた弊所独自の長期の世界エネルギー見通し「IEEJ Outlook」の発表、12月には翌年以降の短期エネルギー需給を見通す分析を公表 しています。不透明なエネルギー情勢の理解と将来に向けた政策・戦略の検討にお役にたてば幸いです。

 設立後54年目を迎え、当研究所は、エネルギー情勢の中長期的、かつ構造的な変化を頭に描きつつ、調査ならびに政策・戦略提言活動を一層充実させていきたいと考えています。関係各界の倍旧のご支援・ご指導をお願い申し上げます。

           日本エネルギー経済研究所 理事長 豊田正和

PDFファイル:豊田理事長 経歴